2008年11月26日

リマスタリング

先日、9タイトル分のリマスタリングをしました。
リマスタリングとは、一度マスタリングされCDとしてリリースされた音源を再度マスタリングし直す作業です。
マスタリングエンジニアの腕が試される作業でもあります。
でも一言でリマスタリングと言っても、持ち込まれる素材は様々です。
レコードの時代のカッティングに使用していた本当の意味でのアナログのマスターテープもあれば、アナログのマスターテープからデータに変換されたもの、 3/4インチのU-maticテープ、PMCD(プリマスターCD)、すでにマスターテープが見つからずに発売されている製品CDなんてものまであります。
やはりクオリティーが高いのは、保存状態にもよりますがアナログのマスターテープです。

ちなみにアナログのテープは年数が経つと次第に磁性体がはがれてきます。
要はテープがベタベタになって再生ヘッドなどに張り付いてしまうのです。
録音してから5〜6年以上経過したアナログテープは、この磁性体のはがれを修復するために熱処理をすることになります。
人によっては「おかまに入れる」とか「オーブンで焼く」とか言ったりします。

今回のリマスタリング作業のタイトルの中には2タイトルほどアナログのマスターテープが含まれていました。
すでに5年ほどまえに一度リマスタリングされていたものでしたので、熱処理済みでした。
ですが熱処理からはもう4〜5年経過していますから、テープの状態は見てみないとわかりません。
1969年と1972年に録音された貴重なマスターテープですから、緊張しました。
何かあったら取り返しがつきません。

アナログのテープレコーダー自体ほとんど使わない時代ですから、まずはテレコの状態をチェック。
多少の問題はありましたがすぐにクリアし、今度は実際にマスターテープをかけてみます。
調整用の信号は1kHzと8kHz。
どう聞いても1kHzと8kHzに聞こえないところが少し不安でしたが、どうにか調整を終え、1曲目を再生。
電源ケーブルやオーディオケーブルを変えたりして、さらに良いサウンドになるセッティングを探ります。
そしてある程度良い感じになったところで、ロビーで待っていただいていたクライアントさん達を呼び戻します。
そして再生。

……。


一同ため息です。
ものすごく良いのです。
空気感とか、奥行きとか、質感とか、何とも言えないあたたかな素晴らしいサウンドでした。
テープの状態も粉落ちなども全くなく、素晴らしい状態でした。
きっと保管状態が良かったんですね。
このまま何もしなくても十分ではありましたが、一応CDにするのでということで、ほんの少し補正程度のEQをするのみの作業となりました。
(元々はレコードにすることを考えて録音されたのですから、そこはきちんと押さえておかなくてはいけません)

リマスタリングの目的って、「当時の音を当時の音のままCDにする」っていうことかもしれない、と思ったりしました。
無理に現代風の音にするのは無意味だし、昔の音を知っている人に懐かしさを感じてもらえれば、知らない人には当時の音を新鮮に聴いてもらえればと思います。
特にレコード時代の音源のリマスタリングはそうであってほしいなと思います。

タイトルやアーティスト名や発売日など公表したいところですが、クライアントの了承を得ていないので今日のところは控えておこうと思います。
ちなみに今回リマスタリングされた9タイトルはすべてHQCDとして発売される予定です。
HQCD・・・Hi Quality CD 通常のCDプレーヤで再生できる高音質CDです。詳しくはコチラ

2008年11月03日

ワンダーステーションとメモリーテック

ワンダーステーションは、メモリーテック株式会社所有のスタジオです。
元をたどると、以前はあのジブリ作品の音楽で有名な久石譲さんのスタジオでした。
さらにその前はMusic In、そしてその前はTwo Two One、さらにさらにその前は青山レコーディングスクールのスタジオでした。
名前は変われど歴史のあるスタジオなのです。

1st
ワンダーステーション1st

ちなみに、メモリーテック株式会社はプレスの会社です。
CDやDVDのプレスです。
筑波、甲府、甲府南、岐阜、そしてグループ会社のトエミ・メディア株式会社の工場も含めると5つのプレス工場を持っています。
最近ではHQCDを発表し、好評を得ています。(HQCDについてはこちら

私が使用しているマスタリングルームは、元は久石譲さんがプリプロルームとして使っていた部屋です。
グランドピアノを入れていたそうです。
そのお部屋を改装して今現在のマスタリングルームが出来ました。
メモリーテックと私が所属するエフとが業務提携し、出来上がったマスタリングルームです。
コンセプトは『リビングルーム』。
いわゆるスタジオライクなサウンドではなく、リビングルルームでゆったりと聴けるようなそんなサウンドを目指しました。
実際のところ、初めていらっしゃるお客様でモニターの音に驚かれる方も少なくありません。
今まで作業していたスタジオの音とは少し違うので、違和感を感じるのかもしれません。
でも、大抵はすぐに慣れます。
スタジオ等で聴いていて「かっこいい!」「いい感じ!」とOKになったサウンドが、家に帰ってもしくは車の中で聴いてみがっがりしたことはありませんか?
このマスタリングルームではそんなことはありません。
そいういった意味でもこのコンセプトは間違っていなかったと感じています。
(ちなみに、私が自宅で聴いているオーディオ環境は正直なところあまり良くありません。
プレーヤーは三菱の録画機能のあるDVDプレーヤー、スピーカーはSONYのテレビ内蔵のものです。
でもこれで聴くと全体のバランスとかが良くわかるんです。)

現在は青山にあったメモリーテックのマスタリングルームもワンダーステーション内に引っ越し、ワンダーステーション2階には2部屋のマスタリングルームと1部屋のチェックルームが稼働しています。
メモリーテックマスタリングルームを201、そして私が使用しているマスタリングルームを202、チェックルームを203と呼んでいます。
スタジオではなく、それぞれの個性を持った部屋という感覚で決めた呼び名です。

201
201

202
202


ちょっと今日は堅くなりましたが、メモリーテックとワンダーステーションの紹介をしてみました。